無線綴じ冊子の基礎知識(2025年版)

もくじ

Ⅰ.冊子のあらまし

1.本の各部の名称

冊子の各部分に使われる名称のうち製作の際によく使われる用語を取り上げました。
無線綴じ製本についての説明はこちら)。

  • カバー(ジャケット)

書籍の表紙の上にかけるおおい紙のことです。
カバーは、本体の保護のためと「本の見た目」を決定します。内容に沿ってよくデザインされたカバーは人目を引きつけます。
カバーには書名、著者名、出版社名、定価、流通上で必要となるISBNコード、JANコードなどが記載されます。表面に傷がつくことを防ぐために一般的にはPP加工が施されます。

これとは別に、製本方法としての「ハードカバー」は上製本、「ソフトカバー」は並製本を意味します。

  • そで(カバーのそで)

表紙を包むためのカバーの折り返し部分です。この部分に著者略歴等を載せることもあります。

販促のために、本のキャッチコピー、推薦の言葉などを記載して表紙カバーに巻きつけます。カバー同様人目を引く目的があります。

  • 天(あたま)

本を立てた場合、上の部分で各ページの最上部のことです。この部分を金色に塗ったものを「天金」、色染めをしたものを「天染め」といい、本を装飾することもあります。

  • 地(けした)

本を立てた場合、下の部分で各ページの最下部のことです。「天」の反対側。

  • ノド

左右に見開いたページのうち中央の部分、製本の際に糊付けした内側の部分です。
ノドの空き具合は紙面の美しさや可読性につながります。

綴じられた本のノド側の外(反対面)の部分で、小口の反対側。表紙・カバーの背の部分を「背表紙」といい、書店で並べた際に書名などがわかるように背表紙のカバーには本のタイトルや著者名などが記されます。

  • 小口

本の中身の背以外の断面のことを言います。小口は三方にありますが、一般的には背と反対側を小口といいます。上の小口を「天」、下の小口を「地または罫下」といいます。

  • 見返し

表紙と本文の間に、半分に折った紙の片側を表紙の裏に糊付けします。オモテ表紙と本文、ウラ表紙と本文の2カ所必要です。表紙と中身をつないで、見た目の良さや本の強度を増す役割があります。一般的には本文とは違う用紙を使用します。ソフトカバーには見返しは必ずしもありませんが、ハードカバーには必ず付けます。

  • しおり(スピン)

本の背の上端に糊付けされ本の中に折り込まれるひも状のものです。必ずしも必要とは限りません。

 

2.本に関する用語

  • 装丁(そうてい)

カバー、表紙、見返し、扉、帯、外箱などの本のデザインや、材料の選択を含めた造本の一連の工程・意匠のことをいいます。または本を綴じて表紙などをつける作業のこと。

  • 右綴じ・左綴じ

表紙に向かってどちら側を綴じるかを表します。
通常、本文が縦書きの場合は「右綴じ」、横書きの場合は「左綴じ」になります。

  • 本文

冊子の主体部分です。

 

  • トビラ・中トビラ

本文のうち、「章」や「編」に分かれている場合にそれぞれの区切りとして標題を付けたトビラ紙を挿入することがあります、これを中トビラといいます。このうち、本文の最初(表紙や見返しの次)に挿入されるものを単にトビラといいます。

トビラの用紙は、本紙とは違う厚紙や色紙を使用してタイトルその他何らかの印刷をします。中トビラは本文と共通の用紙とする場合や色紙などを使用する場合があります。標題の印刷は片面または無い場合もあります。

  • 見開き

冊子を開いた状態で、左右の2ページを見開きといいます。図版や写真、表組などが1ページに入りきらない場合には見開きで2ページにまたがって構成されることがあります。

無線綴じ冊子の場合にはノドのアキを考慮しで左右ページのデザインをしなければなりません。中綴じ冊子の場合にはノドがいっぱいに開くので2ページ全体に連続したデザインが可能となります。

  • 背文字

本の「背」に記載された文字のこと。書名、著者名、出版社名などが記載されます。書棚に立てて並べた時には背文字しか見えないので、読みやすく目立つように考慮する必要があり意外と重要な部分です。

なお、ページ数が少なくて背の厚みがあまりない冊子(5ミリ以下)については背文字が付けられないことになります。

  • 奥付(おくづけ)

本文の最後に記載する、著者・書名・発行者・発行日などの情報部分のこと。書店で流通させる場合には必ず必要となります。

  • ノンブル・柱

ノンブル:ページ番号のこと。扉・目次・白紙ページ・奥付など、数えるが表示しない”隠しノンブル”とする場合もあります。

柱(はしら):各ページの上端または下端の小口側に寄せて記載された章名や項目名などのこと。ノンブルと一緒に記載されることが多い。奇数ページまたは偶数ページのみに記載したり、各ページに記載したりする。奇数ページには章名を、偶数ページには署名を記載したりする場合もあります。

(参考)ブログ「ノンブルと柱について

 

  • 売上カード(売上スリップ)

出版社が作成して書籍のページの間に挟んでおく短冊形のカード。書名・ISBNコード・出版社名・定価などが記載してあります。

小売り書店が書籍を販売した際に抜き取っておき、追加注文の際に小売店名、取次店名印を押して出版社(または取次)に回すために利用します。

3.本のサイズ

本のサイズは、種類・用途・目的によって使い分けがされています。

一般的によく使われる本のサイズは以下の通りです。

写真集や画集、詩集、図録などでは、変形サイズのものやヨコ型の場合もあります。A版、B版は規格サイズですが、菊版、四六判、新書版、文庫版は出版社によって多少のサイズの違いがある場合があります。
ハードカバーの場合は、表紙が本文より大きくなりますので、本のサイズはこれより少し大きくなります。

本のサイズ一覧
A4判 297mm×210mm 図録,会社案内,記念誌,社内報,雑誌,カタログなど
B5判 257mm×182mm 事典,技術書,教科書など
菊判  218mm×152mm 単行本,専門書,雑誌など
A5判 210mm×148mm 学術書,専門書,教科書など
四六判 188mm×128mm 単行本,文芸書など
B6判 182mm×128mm 単行本,文芸書など
新書判 179mm×105mm 新書本など
文庫(A6)判 148mm×105mm 文庫本など

4.よく使われる用紙とその色

冊子の、「表紙」・「本文」・「中トビラ」・「カバー」の各部について、よく使われる用紙の種類、代表的な色の種類とその厚さを表示します。

用紙の選択の際には、「用紙の種類(銘柄)」、「厚み(kg/連)」、「色」のほかに、出来上がった冊子の開きやすさを考慮して「タテ目(T目)」か「ヨコ目(Y目)」かを選びます。

例えば、「しらおい・上質紙・70kg・タテ目」と言えば、「銘柄=しらおい」「用紙の種類=上質紙」「厚み(kg/連)=70kg」「用紙の目=タテ目」ということになります。

なお、「厚み(kg/連)=70kg」と指定した場合は、正確には四六判の用紙寸法のことを指します。「菊判48.5kg」、「A版44.5kg」は、用紙寸法が違うだけで厚みは同じなので用紙としては同じものです。印刷物の仕上げ寸法によって使い分けをします。

メーカーから提供される全紙の用紙には、「四六判」、「菊判」、「B判」、「A判」などの大きさがあるので、冊子のサイズによって全紙から何ページ分とれるかを計算して、どの大きさの用紙を使用するかを決めます。

 

【上質紙】135kg、110kg、90kg、70kg、55kg

表紙、本文など、印刷用紙として最も一般的に使われます。表面にコーティング加工を施してないので、光沢が少なくコシがあって破れにくい紙です。モノクロ印刷、2色印刷でよく使われます。

  • 表紙:135kg、110kg
  • 本文:70kg、55kg
  • 見返し:110kg、90kg

 

【コート紙】135kg、110kg、90kg、73kg
表紙、本文など、印刷用紙として一般的に使われます。表面に塗料が塗布され、若干光沢感のある紙です。表面が艶消しのマットコート紙もあります。発色が良く、写真が綺麗に印刷できます。カラー印刷でよく使われます。

  • 表紙:135kg、110kg
  • 本文:90kg、73kg

 

【色上質紙】特厚口、厚口、中厚、薄口
表紙やトビラなどによく使われる色の付いた上質紙です。豊富な紙の色を選択することができます。1色の印刷でよく使われます。代表的な色は次の28色ですが、ホームページではよく使われる10色の色見本を表示しています。

  • 表紙:最厚口、特厚口
  • 本文:中厚口
  • 見返し:特厚口、厚口
  • トビラ:厚口、中厚口

赤、オレンジ、サーモン、桃(ピンク)、コスモス、さくら、黄色、濃クリーム、クリーム、レモン、白茶、びわ、肌色、アイボリー、もえぎ、みどり、うぐいす、若草、藤色、ラベンダー、あじさい、ブルー、空色、水色、あさぎ、うす水、銀ねずみ、黒

*(参考)ホームページ掲載の色見本10色:あさぎ、ブルー、クリーム、藤色、銀ねずみ、水色、桃(ピンク)、サーモン、空色、うぐいす

 

【レザック】215kg、175kg、130kg、100kg
表紙や見返しなどによく使われます。皮革風のエンボス加工がかけられた、表面に凹凸のある紙です。
オフセット印刷ではきれいに印刷できますが、オンデマンド印刷には不向きです。
色は全50色ですが、ホームページではよく使われる10色の色見本を表示しています。

  • 表紙:215kg、175kg、130kg
  • 見返し:130kg、100kg

さくら、もも、ピンク、ぼたん、あか、べに、だいだい、たまご、れもん、きいろ、からし、きんちゃ、うすみどり、アボガド、ライトグリーン、グリーン、オリーブ、あさぎ、ミント、みずいろ、スカイ、あおたけ、マリン、うすあい、あおねず、ふじ、こん、うすむらさき、すみれ、むらさき、クリーム、アーモンド、こそめ、ぞうげ、ベージュ、オークル、らくだ、ちゃいろ、くりちゃ、しろ、ゆき、ミルク、ホワイトグレイ、しろねず、ライトグレイ、うすねず、ぎんねず、ねずみ、ダークグレイ、くろ

*(参考)ホームページ掲載の色見本10色:あか、あさぎ、ベージュ、クリーム、ぎんねず、きいろ、さくら、しろ、うすねず、ぞうげ

 

【ミューズコットン】163kg、118kg、90kg、73kg
表紙や見返しによく使われます。豊富なカラーバリエーションとストライプ状の簀(す)の目(表面の凹凸)が特徴の紙です。パッケージやペーパークラフト、ディスプレイ用の材料からパステル画や色鉛筆、水彩画などの支持体まで、幅広い分野で活用されています。オフセット印刷ではきれいに印刷できますが、オンデマンド印刷には不向きです。
色は全131色ですが、ホームページではよく使われる9色の色見本を表示しています。

  • 表紙:163kg、118kg
  • 見返し:118kg、90kg

*(参考)ホームページ掲載の色見本9色:びゃくろく、あいじろ、あさはなだ、ふかがわねず、うすべにふじ、にゅうはく、とりのこ、ねこやなぎ、しろ

 

【アートポスト】220kg、200kg、180kg
表紙やハガキ、カードなどに使われます。白色の紙で表面に塗料が塗布され、若干光沢感があります。
コート紙より厚く、発色が良く、カラーの印刷にも適しています。

  • 表紙:180kg

 

5.インキの刷り色(特色)

モノクロ印刷の場合の「墨」、カラー印刷の場合のプロセスインキ「C(シアン/藍)、M(マゼンタ/紅)、Y(イエロー/黄)、K(ブラック/墨)」以外のインキで印刷する場合は全て特色と呼ばれます。

このほかにも特殊インキとして、蛍光インキ、金、銀、パール系のインキ、UVインキ、抗菌インキ、芳香インキ、示温インキ、紫外線遮断インキ、隆起インキ、磁性インキなど様々な種類があります。

「特色」とは、特練りインキとも呼ばれます。プロセスインキでの再現が難しい色を出すために10~25色の基本色インキがあり、これを混色して特色インキを作ります。
モノクロ印刷の場合の表紙の刷り色や本文の刷り色、2色印刷の場合のモノクロ以外の刷り色について、当ホームページではよく使われる12色をDICの色見本帳(カラーチャート)から表示しています。


*(参考)モノクロ印刷で、「墨」以外の1色(特色)で印刷する場合は、「らくらく自動見積」では追加オプション(有料)で下記の色見本12色からお選びいただけます。

ホームページ掲載の色見本12色

6.無線綴じ製本

糸や針金を使わず、冊子の背の部分に接着剤が接合しやすいようにギザギザを付け、表紙をくるむ製本方法で、”あじろ無線とじ”とも呼ばれます。
無線綴じは、安価で強度が高く丈夫なので現在最も一般的な冊子の製本方法といえます。

数十頁~1000頁位の冊子の製本が可能です。

報告書や記念誌、文庫本、取扱説明書、問題集、テキスト、商品カタログ、会社案内、台本などにおすすめします。

 

Ⅱ.表紙について

1.本体表紙の用紙

本体表紙とは、書籍本体の表紙のことで、カバーおよび帯はこの本体表紙の外側に巻かれることになります。
本体表紙の用紙には、上質紙、色上質紙、レザック、ミューズコットン、アートポストなどがよく使われます。

 

【上質紙】
印刷用紙として最も一般的に使われます。表面にコーティング加工を施してないので、光沢が少なくコシがあって破れにくい紙です。
*標準では上質135kg、上質110kgをお選びください。

【コート紙】
表面に塗料が塗布され、若干光沢感のある紙です。発色が良く、カラーが綺麗に印刷できます。表面が艶消しのマットコート紙もあります。
*標準ではコート135kg、コート110kgをお選びください。

【色上質紙】
色の付いた上質紙です。紙の色は色上質紙の色見本から選択することができます。
*標準では特厚口をお選びください。

【レザック】
皮革風のエンボス加工がかけられた、表面に凹凸のある紙です。
オフセット印刷ではきれいに印刷できますが、オンデマンド印刷には不向きです。
紙の色は色の一覧(表紙)ページのレザックの色見本から選択することができます。
*標準では175kgをお選びください。

【ミューズコットン】
豊富なカラーバリエーションとストライプ状の簀(す)の目(表面の凹凸)が特徴の紙です。パッケージやペーパークラフト、ディスプレイ用の材料からパステル画や色鉛筆、水彩画などの支持体まで、幅広い分野で活用されています。オフセット印刷ではきれいに印刷できますが、オンデマンド印刷には不向きです。紙の色はミューズコットンの色見本から選択することができます。

【アートポスト】
白色の紙で表面に塗料が塗布され、若干光沢感があります。
発色が良く、カラーの印刷にも適しています。

 

2.ソフトカバーとハードカバー

  • ソフトカバー(並製本)

ソフトカバーは、冊子の本文を同じ大きさの厚手の柔らかい表紙でくるみます。ハードカバーより安価に作ることができ、冊子の製本では最も一般的な方法です。耐久性はハードカバーの書籍に比べて劣ります。

通常は無線綴じと呼ばれる方式になります。

無線綴じ製本は、針金や糸で綴じることはせず、丁合された本の背をつき揃えて、背の3~5ミリ程度を削ってガリ(きざみ)を入れ、高温で溶かした糊(ホットメルト)で表紙を接着して固める方法です。

中綴じ製本に比べて本のノドの部分が若干開きにくくなります。PUR製本は、強度のある特殊な糊を使った製本でページを大きく開くことができます。

 

  • ハードカバー(上製本)

厚手のボール紙を布や紙などで包んだ表紙が使われ、厚みのあるしっかりとした製本で、背を糸かがりした場合はページを大きく開くことができて、より丈夫で長持ちします。

仕立てやくるみ方によって、丸背(みぞつき・つきつけ)、角背(みぞつき・つきつけ)などの種類があります。ページの少ない本は丸背には向いていません。

背の仕立て方は、フレキシブルバック(柔軟背)、タイトバック(硬背)、ホローバック(あな背)の方式があり、本の開閉や背の耐久性にそれぞれ特徴があります。

背の綴じ方法としては糸綴じ、あじろ無線綴じがあります。

また、化粧のために外函(ケース)を付けることもあります。

表紙付けは中身を化粧裁ちした後で行われるので、表装された表紙の大きさが本文用紙に比べてやや大きめになります。

長期間保管する書籍や絵本等に向いています。

 

3.カバー・帯・PP加工

  • ブックカバー

ハードカバー、ソフトカバーともに、ブックカバーを追加することがあります。
ここでの「ブックカバー」とは、本体表紙に被せる紙のことで、「ジャケット」とも呼ばれます。多くは表面にPP貼り加工が施されます。ブックカバーがあることで、表紙・裏表紙の汚れやキズを防ぎ、長期間美しい状態を保てます。また、書店から返本された汚損本はカバーを交換することにより、再び新品に近いものとして流通できます。定価や流通コードは、奥付ではなくこのカバーに記載されることが多いので、価格改定時や消費税率改定の際も、カバーの差し替えだけで対応できます。
ブックカバーはカラー印刷されることが多いので、写真や色の再現性が良いコート紙が使われます。

 

帯にはその本のキャッチコピーや、有名人からの推薦文などを掲載します。帯の内容が本の売り上げを左右することもあり、書店流通のためには有効な手段です。

​(参考)ブログ「本の帯は必要か」もご覧ください。

  • PP加工

表面にフィルムを圧着して貼り付ける加工のことで本の表紙やカバーによく使われます。光沢や高級感が増し、キズの防止、耐水性・強度が増す効果があります。


(参考)ブログ「表面加工について」もご覧ください。

Ⅲ.本文について

1.本文のレイアウト(DTP組版)

  • DTP組版について

DTP(デスクトップパブリッシング)とは、マッキントッシュやウィンドウズのパソコンを使って印刷の前工程であるプリプレス作業をすることを言います。文字や画像をパソコン上で組み合わせて、印刷用の版の元となるデータや版そのもの、またはそのまま印刷物まで作ります。デザインやレイアウト作業、文字組版作業を同時進行で行うことができます。

文字組版は、明治以来活字を組み合わせて作る活版が主流でした。続いてタイプライターや、モリサワと写研による写植機を使った組版がとって代わります。しかしこれらはいずれもアナログの組版で、熟練した職人による専門業者の手作業で行われました。

日本では、1980年代に日本語ワープロが出現し、続いてプロ用の文字組版編集用システムとして電算写植や電子組版機などができました。そして汎用のマッキントッシュが1990年代に出現すると、搭載するアプリケーションの充実とともに一気に置き換わってしまいました。

文字組版の際に必要とされる「組版ルール」は日本語の場合特に複雑で、出版社によっては独自の組版ルールを設定している場合もあり、アナログの時代には熟練工の技術と知識が重要視されていました。美しさと読みやすさを追求した日本語書籍の精髄ともいえます。そのノウハウがデジタル汎用機では、PCの性能とアプリケーションの進化によって完全に自動化されるようになり、それほどの専門知識がなくても文字組版を行うことができるようになりました。

ここで組版技術は、完全にアナログからデジタルに移行し、さらに大きなことは専門業者が独占していた文字組版が、マッキントッシュやウィンドウズの汎用機械で行えるようになったことです。

使用するアプリケーションソフトは、アドビ社の「InDesign」、「Illustrator」、「Photoshop」などが用いられます。「InDesign」は、書籍やカタログなどの頁物に使用されます。「Illustrator」は、ポスターやチラシなどの端物の作成に向いています。イラストやロゴ作成などデザイン重視の制作に使用されます。「Photoshop」は、画像の加工・編集に使用されます。画像合成や色調整など画像に関するさまざまな作業が行えます。

そのほか、入稿データとしてはワープロソフトのWordや表計算ソフトのExcelなども使用されます。

これらDTPで作成された組版データは、印刷用PDFに変換され、使用する印刷機に応じた刷版(印刷用のPS版)のサイズに合わせて面付されます。

 

  • 本文のレイアウトについて

本文のレイアウトは、本の内容によって本のサイズ、フォント、縦書き・横書き、ノンブル、柱、背文字、その他多くの文字組の約束事やノウハウがあります。組版にあたっては、まずは冊子の大きさとページ内の文字数を決めて文字の組み方(レイアウト)を決める必要があります。次の表は、本のサイズごとの標準的な1ページ内の文字詰を一覧にしています。

 

・冊子の標準的な版型と文字数
版型 サイズ 文字数
縦書B5 182mm×257mm

55字×19行=1045字

30字×25行×2段=1500字

縦書A5 148mm×210mm

46字×16行=736字

25字×19行×2段=950字

縦書四六 127mm×188mm

43字×15行=645字

44字×17行=748字

縦書B6 128mm×182mm

41字×14行=574字

43字×17行=731字

縦書新書 103mm×182mm

39字×13行=507字

42字×16行=672字

縦書A6 105mm×148mm

38字×12行=456字

39字×13行=507字

横書B5 182mm×257mm

42字×31行=1302字

21字×39行×2段=1638字

横書A5 148mm×210mm

34字×27行=918字

36字×28行=1008字

横書B6 128mm×182mm

29字×23行=667字

31字×24行=744字

■文字組の方法はこれ以外にも様々あります。実際の組見本でお確かめください。

 

 

2.ページ数

  • ページ数とは、本文に使われるページの合計です。1枚の紙、表裏で2ページとなります。

ページ数はノンブルを記載するかどうかにかかわらず、表紙・見返し・トビラを除く本体(本文)部分全体を数えます。中トビラ、目次、奥付、白紙のページなどもページ数に含めるのが一般的です。
 

  • ページ数は偶数になります。

ページ数は、表と裏で2ページと数えますので必ず偶数になります。

縦組みなら本文を開いて右側が偶数ページ・左側が奇数ページで、横組みならその反対です。

 

  • 背文字を入れるのは本文50ページ以上

無線綴じでは本文約50ページ以上が適当です。8ページ~48ページの場合は背文字は入れずに中綴じ製本にするのが一般的です。

 

  • 背文字は3㎜以上の厚みが必要です

無線綴じでは、背文字を入れるには約3㎜以上(できれば5㎜以上)の厚みが必要です。これは、上質135kの表紙に上質70kの本文の場合、56ページ以上ということになります。厚みが約3㎜以下の場合は背文字を入れないほうが無難です。無理に背文字を入れようとすると、背文字が小さすぎたり、文字が背の幅をはみ出したり、製本時の多少のずれによって背文字が片方に寄ったりしてしまうことがあります。

 

 

3.本文の用紙

冊子の本文用紙には一般的に次の種類がよく使われます。

用紙の厚みは、無線綴じ製本での冊子では55k~70k(四六判換算)ぐらいが標準的でしょう。

お客様が用紙を指定する場合には、「用紙の種類」と「厚み(斤量)」で十分ですが、実際に用紙を注文する際には、「銘柄」、「用紙寸法」、「タテ目またはヨコ目」の指定が必要なので印刷会社にお任せしたほうが無難です。

*(参考)もう少し詳しい説明は、「印刷仕様について/用紙について」も併せてご覧ください。

 

【上質紙】

白色の紙で図や文字がきれいに印刷されます。モノクロ印刷に適しています。

  • ​​​​70k
  • 55k

【書籍用紙】

クリーム色の紙で目にやさしい色です。一般的に小説や文芸書等ではクリームの用紙を使用することが多いようです。モノクロ印刷に適しています。

書籍用紙の色見本

  • 66.3g/㎡(​キク版換算で39.5kg)

  • ​84.3g/㎡(​キク版換算で50.5kg)

【コート紙】

表面に塗料が塗布され、若干光沢感のある紙です。写真・図版・などの再現性に優れ、カラーがきれいに印刷できるので、写真集やカタログなどによく使われます。

  • ​90k

  • 73k

【マットコート紙】

表面にマット(光沢なし)の塗料が塗布され、高級感があります。カラーはきれいに印刷できますが、少し落ち着いた色味になります。写真と文字の混在する本、写真集や絵本などでよく使われます。

  • ​90k

  • 70k

4.本文の印刷

本文の印刷は、印刷物の仕様によって「オフセット印刷機」、または「オンデマンド印刷機」、またはその両方「ハイブリッド」方式を選ぶことになります。

その選択するためのめやすを説明します。

 

  • 印刷部数で選ぶ

大雑把に言って、少部数はトナー方式のオンデマンド印刷、中部数は軽オフセット印刷またはインクジェット方式のオンデマンド印刷、大部数はオフセット印刷が適しています。

少部数とは1~300部。中部数とは500~1000部。大部数とは2000部以上が目安となります。

  • 印刷料金で選ぶ

一般的には印刷料金は以下の順序となりますが、上記の部数との関係も考慮する必要があります。たとえば、トナー方式のオンデマンド印刷が安いからと言って500部以上のものの場合には軽オフセット印刷やオフセット印刷が安く上がります。また、少部数のカラー印刷をオフセット印刷で行えばオンデマンド印刷より高くなってしまいます。要は適切に印刷方式を選択する必要があります。

安い ⇔ 高い

  • 品質で選ぶ

品質で選ぶとは、その印刷物の内容が何であるかにもよります。例えばカラーの写真集のような印刷物は写真の再現に気を使った印刷でなければなりませんし、文字だけのテキストのような印刷物は長期保存性や文字の再現性はそんなに考慮しなくてもいいでしょう。しかしながら、最近はオンデマンド印刷も印刷物の内容と用途を適切に選択し、適切な用紙を選択すれば、オフセット印刷とそん色なく仕上げることができるようになりました。

通常品質 ⇔ 高品質

  • オフセット印刷とオンデマンド印刷の選択について

「オフセット印刷」は、印刷機に版(PS版)を装着して、オフセットインキで印刷します。機械が大型で高速で印刷しますので、大量の印刷物に向いています。オフセット印刷でも「軽オフセット」と呼ばれるものは、機械が小型で版も紙版(ダイレクト版)を使用します。おもにモノクロ印刷で中小ロットの印刷物に向いています。

「オンデマンド印刷」は、トナー方式とインクジェット方式があり中小ロットの印刷物に向いています。トナー方式は事務機用のコピー機と同じ方式ですが、業務用に機械の堅牢さや安定性、色の再現性に留意した作りになっています。インクジェット方式は、トナー方式より機械が高価で維持費も高くつきますがオフセット印刷とそん色ない出来上がりになります。

また、オンデマンド印刷にはオフセット印刷とは違った特徴があります。「版」を必要としないということと、元データに従って違うページを順番に印刷することができるということです。このため、極小ロットやバリアブル印刷が可能となります。ただし、オフセット印刷機に比べて適合する用紙は限られます。

*(参考)バリアブル印刷とは、「可変印刷」と訳されます。宛名をページごとに変えて印刷したり、データに基づいて内容を変えて印刷することをいいます。

 

5.オフセット印刷とオンデマンド印刷、ハイブリッド印刷とは

  • オフセット印刷

オフセット印刷は平版印刷という印刷方法のひとつです。親油性のインクと水の反発を利用し、文字や写真などにインクを乗せる部分とインクを乗せない部分をわけます。印刷機の版胴に版が巻き付けられており、インクと水が供給されます。版がブランケットと接触すると、インクがブランケットに移る仕組みです。さらにそのインクが転写され、文字や写真を印刷します。

カラー印刷は4色「C(シアン)」「M(マゼンタ)」「Y(イエロー)」「K(ブラック)」で印刷します。そのため印刷用刷版も4枚、印刷用ユニットも4つ必要になります。

印刷機は、枚葉印刷と輪転印刷機があります。枚葉印刷機は、シート状にカットされた用紙を一枚一枚印刷します。輪転印刷機は、ロール状の用紙が連続して印刷され、折って出てくるために印刷スピードが速く、チラシや新聞などの大量の印刷物に向いています。

枚葉機でもA2サイズから四六全判サイズまで様々です。カラー印刷を表裏同時にすることのできる8色機もあります。ネット通販では、多種類の印刷物を同時に印刷するギャンギング印刷用に超大型の四六倍版という機械も使われているようです。

オフセット印刷では、薄紙から厚紙まで様々な種類の用紙に印刷でき、用紙サイズも様々な大きさのものを印刷できる特徴があります。インキも特色インキなど様々なインキを使用することができます。

このようにオフセット印刷は、安定した品質で様々な用途の印刷物を刷ることができます。料金は大量に印刷する場合は安価になりますが、アルミ版(PS版)を作成するため、オンデマンドや軽オフセットに比べて小ロットでは割高になります。

 

  • 軽オフセット

墨(黒色)インキで刷る文字中心の印刷物の場合に、PS版の代わりに紙の版を使用して小型の印刷機で印刷します。中小ロットの印刷を安価で作成することが出来ます。

 

  • オンデマンド印刷

用紙にトナーを転写させる感光体にレーザーを照射することで印刷します。版を作りませんので、小ロットの印刷を安価で作成できます。大量に印刷する場合はコスト高になってしまいます。
また、最近ではインクジェット方式のオンデマンド印刷も増えてきました。版を使用しないので小ロット~中ロットに適しています。トナー方式より高額になりますがオフセットとそん色ない仕上がりとなります。

 

  • ハイブリッド印刷

オフセット印刷とオンデマンド印刷の特長を考慮して、混在した方式で冊子を仕上げます。

例えば、カラーの表紙と口絵はオフセット印刷、モノクロの本文はオンデマンド印刷の場合。また、少部数で本文にモノクロとカラーページが混在する場合は、モノクロページを軽オフセットまたはオンデマンド印刷、カラーページはオフセット印刷またはオンデマンド印刷などの方式をとることができます。コストと品質に対する要望を比較して最適な方式を選択します。

 

6.見返しの仕様

見返しは表紙と本文の間に挿入される色紙のことです。

表紙と本文を繋ぐ役割があり、強度も増すのでハードカバーの書籍には必須です。ソフトカバーの場合は必須ではありませんが、見返しがあることで見た目の高級感がでてきます。
見返しの用紙には、上質紙、色上質紙、レザック、ミューズコットン、NTラシャなどがよく使われます。

 

【上質紙】

印刷用紙として最も一般的に使われます。表面にコーティング加工を施してないので、光沢が少なくコシがあって破れにくい紙です。
*標準では上質110kg、上質90kgをお選びください。

 

【色上質紙】

色の付いた上質紙です。紙の色は色上質紙の色見本から選択することができます。
*標準では特厚口、厚口をお選びください。

 

【レザック】

皮革風のエンボス加工がかけられた、表面に凹凸のある紙です。
オフセット印刷ではきれいに印刷できますが、オンデマンド印刷には不向きです。
紙の色は色の一覧(表紙)ページのレザックの色見本から選択することができます。

*標準では130kgをお選びください。

 

【ミューズコットン】

豊富なカラーバリエーションとストライプ状の簀(す)の目(表面の凹凸)が特徴の紙です。パッケージやペーパークラフト、ディスプレイ用の材料からパステル画や色鉛筆、水彩画などの支持体まで、幅広い分野で活用されています。紙の色はミューズコットンの色見本から選択することができます。
*標準では厚口、薄口をお選びください。

 

【NTラシャ】

平らなラフの紙で、ザラッとした手触りがあります。
良質のコットンパルプを配合することで、独特の柔らかく素朴な質感と、緻密で温かい肌触りが生まれています。淡色から原色まで取りそろえた豊富な色がそろっています。

 

7.中トビラの仕様

中トビラは、本文の間に章の区切りなどとして挿入する色紙などです。「章番号や章タイトル」などを印刷する場合と印刷せずに白紙のままの場合とがあります。

通常は、本文の総ページ数として数えますがノンブルは打たないことが多いようです。

トビラは、以下のようにその位置によって多くの呼び方があります。

 

  • 本トビラ(題トビラ、表題紙)

​表紙を開けると見返しの遊び部分があり、その次にくるトビラのこと。書名、著者名、発行所名、書誌事項などを記載します。多くは本文とは別の厚手の用紙が使われる。裏は書誌事項を記載するか白紙のことが多い。

 

  • 前トビラ(小トビラ)

​本トビラの前にあって書名のみを記載します。

 

  • 中トビラ

本文中にあるトビラ。本文が数章に分かれている場合に、ひとつひとつの章の区切りとして表題を記載したトビラを付けることがあります。色上質などの色紙を使って裏は印刷せずに白とすることが多い。

 

  • 半トビラ

​本文中で、表面は中トビラとして章の表題などを記載し、裏面から本文を始める場合。この場合は本文と同じ用紙を使用する。

Ⅳ.その他

1.ISBNコード・定価・バーコード

書店流通をさせる場合は、裏カバー(表紙)などに日本図書コード(ISBNコード・分類コード・定価)と呼ばれる書籍情報が記されます。

さらにこれを読み取るための書籍JANコードと呼ばれる2段のバーコードと数字が付加されます。

ISBN(国際標準図書番号)は978から始まる13桁の数字で、書籍を特定するために使われる固有の番号です。世界中の書籍に使われています。

裏カバー(表紙)の他に、奥付にも表示することになっています。

流通しない書籍の場合は、日本図書コードと書籍JANコードの記載は必要ありません。

 

  • ISBNコードの数字の意味。(例:978-4-86456-121-1)

「接頭記号」+「国記号」+「出版社記号」+「書名記号」+「チェックディジット」

接頭記号(プリフィックス):「978」は書籍出版業を表わす記号。

国記号:「4」は日本を表わす記号。

出版社記号:2~6桁の数字で出版社によって固有の記号。

書名記号:2~6桁の数字。

チェックディジット:0~9の数字、1桁のチェック計算のための数字。

 

  • 分類コード(Cコード)(例:C0072)

分類コード(Cコード)はCの後に記載されている4桁の数字です。

1桁目は販売対象、2桁目は発行形態、3・4桁目は内容をそれぞれ表します。

文庫小説の場合は、C0193(販売対象が0で一般、発行形態が1で文庫、内容が93で日本文学、小説・物語)と表示します。

分類コードは、書店で本を陳列する場所の参考などに使用されます。

たとえば実際は小説(3・4桁目は93)だけど、内容的にビジネス書(3・4桁目は34)として扱ってほしい場合は、ビジネス書のジャンルで分類コードを作成することも認められています。

 

  • 定価(例:\1800E)

日本では本は再販制度の対象商品となっているため、生産者が販売価格を決定し、「定価」として本の税抜価格を表示することができます。

 

  • 2段目の書籍JANコードの数字の意味(例:1920072018002)

「書籍JAN2段目プリフィックス」+「分類コード」+「定価コード」+「チェックディジット」

「書籍JAN2段目プリフィックス」:3桁。「192」が付きます。

「分類コード」:4桁。

「定価コード」:5桁。:税抜価格です。

「チェックディジット」:1桁。