ECサイトの賢い利用法(その2)
もくじ
冊子印刷サイトはどれを選ぶ
ECサイトを選ぶポイント
ネット通販で冊子の印刷を注文する場合に考慮すべきことは何でしょうか。
ひと口に冊子印刷専門のECサイト(以降ECサイトと呼びます)といってもそれぞれ特徴があります。このコラムでは、ネット上でよく見かけるECサイトの種類と特徴についてお話していきます。
検索エンジンで、「冊子」、「印刷」と検索してみてください。ズラッと冊子印刷専門のECサイトが表示されます。上位から大手の「プリントパック」や「グラフィック」などが表示され、以下は中小のサイトが表示されていますね。これらのサイトの特徴は何でしょうか。次の基準で分類しながらお話を進めていきましょう。
- 価格の安さをうたっている
- 印刷方式(オンデマンドかオフセットか)を限定している
- 相談が可能かどうか
- その他のサービスがあるかどうか
1. 価格の安さをうたっている
価格の安さを標榜している、「プリントパック」などの大手が市場の低価格を引っ張っています。そのほか多くの大手、中堅のECサイトはこの「価格の安さ」を一番の売りにしています。一部の小規模のECサイトでも価格的に追随しているサイトもあるようですが、おそらく経営的には厳しいのではないでしょうか。
大手は、毎日の注文件数が多く、注文された印刷物の仕様により最適な設備を数多くそろえていますし、それぞれの設備の高い稼働率が低価格を支えています。
用紙など諸材料の仕入れ値は、最近急上昇してはいますが、やはり大手は仕入れる量がけた違いに多いので、小規模サイトの仕入れ力とはかなり違いがあります。
データ入稿では、不備のあるデータを独自のアルゴリズムでチェックし、もしくは最適化することも行われているようです。ただ、発注者のデータ作成に不備があった場合にはほぼ不満足な結果に終わります。
いずれにしても、できるだけ人の手をかけずに自動で生産する仕組みなので、発注者による間違いはそのまま印刷される恐れが大きいです。問い合わせをしたり、専門家に相談しながらより最適の冊子仕様を選択することなどはほとんど期待できません。
一般に、冊子の印刷はチラシなどと違って商品ごとに本づくりのノウハウが随所に必要になってきます。大手ECサイトが苦手な分野だといえます。
なお、チラシなどの端物がけた違いに安いのはなぜかと思われたこともあるでしょう。冊子印刷にはあまり利用できませんが、これは、「ギャンギング印刷(付け合わせ)」といって大きな印刷機に異なる種類の商品を同時に付けて同じ用紙で一緒に印刷するために安くなります。注文数の違いは最大公約数で印刷するので余ったものは廃棄することになります。通常、一つの商品を絵柄に合わせて色管理しながら印刷するのがいい印刷物を作るためには必要となります。ギャンギング印刷では、デザインや色合いの違う印刷物の品質を個別に管理することはできないので邪道であるともいえますが、安さを追求するためにこのような「多丁付け」による印刷が最近は多くなされています。
2. 印刷方式(オンデマンドかオフセットか)を限定している
大手ECサイトは、総合的にどんな印刷物でも受注しますので、多くの設備を持っていますし、もちろんオンデマンド印刷でもオフセット印刷でも可能です。料金体系もシームレスに設定してあります。注文する印刷物の内容に合わせて、発注者が印刷方式を選択することになるでしょう。
中小のECサイトの各ページをよく見てください。オンデマンド印刷だけのサイトと、オフセット印刷とオンデマンド印刷の両方で製造するサイトに分かれます。
小ロット専門とか安さを売り物にするECサイトの場合は、オンデマンド印刷だけのサイトが多くなっています。
これに対して、発注者との相談を重視しており、小ロットから大ロットまで請け負うECサイトの場合は、オフセット印刷とオンデマンド印刷の両方で製造するサイトが多くなっています。
ですから、小ロットの注文で、発注者が印刷用完全データを作成でき、あまりECサイトに相談する必要もない場合には、オンデマンド印刷専門のECサイトに発注してもいいでしょう。そうでない場合には、両方で製造できるサイトでチェックしてもらい、相談しながらすすめたほうが安心かもしれません。
3. 相談が可能かどうか
ECサイトでは、基本的に印刷用の完全データは発注者が作成して注文することになっています。ただし、そうはいっても冊子の専門的知識が少ない発注者にとっては、不安な要素も多いですし、よりよい方法を相談できればそれに越したことはありません。
例えば、無線綴じ製本では冊子の本文にくるみで表紙を巻くわけですが、背文字の厚みの計算をして、さらにトンボを付けて表紙の印刷データを作るのはかなり難易度が高くなります。
また、本文の用紙とページ数に対して、色上質の表紙を使う場合に、よく使われるのは厚口と特厚、最厚などの種類があります。それぞれの厚みがどれぐらいが最適なのかなかなかわかりづらいのではないでしょうか。
このようなサイトでは、本番印刷用の最終データを発注者自身が確認してから印刷するシステムをとっている場合もあります。
印刷用の完全データの作成に不安がある多くの発注者の方にとっては、相談に乗ってもらえる中小のECサイトを選ぶのが安全で利口なやり方だと思います。
4. その他のサービスがあるかどうか
冊子を作るためには、自動見積で行われる基本的な仕様のみで終わるケースは少なく、様々な追加のオプションなどが必要な場合がよくあります。
多くのECサイトでは、「表紙PP加工」、「穴あけ」、「上製本」、「見返し」、「色校正」などを追加オプションとして有料で提供しています。
また、「DTPサービス」、「表紙のデザイン」、などの追加サービスを有料で提供している場合もあります。
その他、それぞれのECサイトで独自の特徴あるサービスを行っている場合があります。「印刷見本の提供」、「電子ブックの提供」、「自費出版物の流通販売」などを行っているサイトもありますので、発注者のニーズに合ったものを選べばいいでしょう。
5. ECサイトの種類と特徴一覧表(まとめ)
これまで説明してきたことをまとめると下表のようになります。もちろんこれに当てはまらない例もありますが、数あるECサイトの中から長く付き合うことのできる良心的なサイトを選ぶ参考にしていただければ幸いです。
大手ECサイト | 中堅ECサイト | 小規模ECサイト | |
---|---|---|---|
価格の安さ | 〇 | △ | ×or△ |
印刷方式(オンデマンド・オフセット) |
両方 | 両方 |
オンデマンドのみ・両方 |
相談が可能か | × | × | ×or〇 |
その他のサービス | × | × | ×or〇 |