印刷の話(その9:文字校正と色校正のはなし)

校正とは

印刷物を作るにあたって品質管理のための重要な工程の一つです。印刷機で実際に印刷する前に、文字・体裁・色合いなどをチェックし不具合を修正することをいいます。文字の誤植や体裁ばかりではなく、内容やデザインの確認、仮刷りを作成して色合いのチェックを行います。

 

校正と校閲について

どちらも似たような名称で同じような作業となるために混同しがちですが、原稿との誤りをチェックすることは同じでもその内容や視点が違います。

「校正」は、原稿と比較して誤字・脱字、用字・用語の統一・文字サイズ・書体・組版ルールなどのチェックを行います。

訂正を書き込むにはJISで定められた訂正記号があり、赤字で記入することになっています。

「校閲」は、文章の記述に誤りがないかどうか、事実誤認がないかどうか、社会通念上正しいのかなど、むしろ原稿の誤りも含めて資料を調べたりしながら情報の正確性をチェックします。

 

*日本著者販促センターホームページ「出版の業界ことば」には、次のような説明がありました。わかりやすかったのでご紹介します。

  • 「校正」と「校閲」って何が違うの?

“校正”と“校閲”って、似ているような意味に思います。実際、どうなのでしょうか。朝日新聞 2016年11月28日(月曜日)夕刊に書かれていますのでご紹介します。
原稿の誤字脱字を直すのが、“校正”、内容に立ち入って不備や矛盾、誤りを指摘するのが「校閲」。(中略)誤字脱字を見つけることは実務を積み重ねれば上達するが、情報の内部に入って正していく“校閲”は、仕事以外の知識や経験がモノをいう。教養を支えるための読書は欠かせません。
似ているような言葉でも、実際は全然違う意味になるのですね。事実、出版業界では、校正者と校閲者は各専門の人がいる、もしくは、そのようなプロに頼んでいることが多いのです。

文字校正について

DTP組版された文章を、原稿と比較して誤字・脱字、用字・用語の統一・文字サイズ・書体・組版ルールなどのチェックを行います。前項で説明した校正のことをいいます。

 

色校正について

色校正は、印刷物の仕上がりが事前の想定と近いものになるかどうかを確認するために行います。

DTPでデザイン・組版した写真やイラストなどの色は、モニタ上で見る色やプリンタで印刷した色のイメージとは異なります。それには以下のような原因があります。

  • モニタはRGBで表示されるが、印刷はCMYKで表示される。
  • 実際に印刷する印刷機と色校正のためのプリンタでは用紙やインキが違う。

このため、本番の印刷とモニタの色合い、または校正用の色合いと全く同じというわけにはいきません。

印刷の品質を評価するためには、印刷用の刷版には「コントロールストリップ」というものを付けて、色合いや印刷の状態をチェックします。印刷する用紙の端の方に長い棒状の色パッチを付けます。品質を評価するためには人の目だけではなく、ベタ濃度・網点の太り・グレーバランスなどを客観的な数値で判断するための指標となります。色校正も同じものを付けて参考とします。

色校正には以下の三種類が多く用いられます。

  • 本機色校正:本番の印刷と同じ印刷機械で実際に印刷して色校正をします。同じ用紙とインキで印刷しますので最も信頼性の高い色校正といえますが、コストが高くなります。
  • 本紙色校正:印刷は用紙によって発色が異なってきますので、同じインキを使用しても例えばコート紙と上質紙とではイメージがずいぶん違います。これを回避するために本番と同じ用紙を用いて色校正をします。用紙の違いによる再現性の違いはある程度チェックすることができます。
  • 簡易色校正:通常、インクジェットプリンタを使用して色校正をします。実際に使用する印刷機の刷り上がりに近くなるよう色校正用に調整してありますので、再現性もまずまずで一般的な色校正といえます。ただ、本番用の印刷機とは機械もインキも用紙も違ったものを用いますので多少の違いはやむをえません。

 

校正についての用語

ゲラ刷り:校正刷りのこと。昔は活版印刷だったので、一度組んだ活字を印刷したものを校正に使用しました。活字を並べる枠箱のことをゲラ(Galley)と呼んだからだそうです。今はデジタルなのでゲラは使用しませんが言葉だけが残っています。

  • 初校:最初に行う校正のこと。原稿と校正刷りとを突き合わせて照合します。
  • 再校:初校を修正して再び校正を行うこと。
  • 三校:再校を修正して三度目の校正を行うこと。
  • 著者校:著者自身による校正。
  • 責了:責任校了。修正の赤字は残っているが、あとは印刷所へお任せという意味。
  • 念校:念のために行う校正のこと。責了としたもののうち、直しのある部分を校正確認すること。
  • 校了:校正完了。校正を終えて印刷にかかること。

 

⇒次回は、「その10/書体とフォントの違い