印刷の話(その5:トンボの話)
印刷業界の用語で、「トンボ」というのがあります。
カラー印刷は、青、赤、黄、黒の4つの版を重ね合わせて印刷します。その4つの版の刷り位置をぴったり合わせるための目印が「トンボ」です。
印刷する紙の四隅にあるコーナートンボと、その間にあるセンタートンボ、通常8か所から10か所についています。
オフセット印刷は水を使いますので、紙の伸縮が問題になってきます。工場の湿度や温度、印刷機の状態によって4色の重なりの見当が狂ってきます。刷りながらこれをチェックするために、髪の毛よりも細い線の印(トンボ)が版の外側に付けてあります。表裏の刷位置を合わせる役目、裁断するときに裁断位置を合わせる役目もあります。
「見当違い」とは、このトンボの位置がずれていることをいいます。昔の印刷物は、絵柄がずれているものが時々ありましたが、今は、機械の精度が良くなりましたから、目で見てわかるような印刷のずれはなくなりました。
この十字の線が昆虫のトンボに似ていることからこう呼ばれているのだそうです。日本のトンボは、江戸時代に浮世絵の職人が発明したものだそうで、版木の見当を合わせるために発明されたといわれています。
海外では、レジストレーションマークとかトリムマークとかさまざまな呼び方があって、形も日本式とは違いますが用途は同じです。
「トンボ」は、印刷業界が用いるほかに、運動場をならすのに使うT字型のレーキ、あれもトンボといいますし、株の業界や建設業界でも別の意味で使っています。
昆虫ではない「トンボ」のお話でした。
*次回は、「その6/PDFのはなし(基礎編)」