ベストセラー考

ベストセラー考

年末恒例の、日版のベストセラーが2023年11月30日に発表されました。総合部門の順位は次の通りです。

 

  1. 小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本(ダイヤモンド社)
  2. 大ピンチずかん(小学館)
  3. 変な家(飛鳥新社)
  4. 変な絵(双葉社)
  5. 街とその不確かな壁(新潮社)
  6. 汝、星のごとく(講談社)
  7. キレイはこれでつくれます(ダイヤモンド社)
  8. ポケットモンスター スカーレット・バイオレット 公式ガイドブック 完全ストーリー攻略(オーバーラップ)
  9. パンどろぼう(KADOKAWA)
  10. 地獄の法(幸福の科学出版)

 

ベストテンの内訳をみると、単行本フィクションが4冊、単行本ノンフィクションが1冊、単行本実用が1冊、児童書が2冊、ゲーム攻略本が1冊、その他1冊です。

 

本が売れない昨今を反映して、全体に小粒感がありますね。本屋さんを期待させるような何百万部といったモンスタータイトルはなかったようです。今年前半集計でトップを走っていた村上春樹さんの「街とその不確かな壁」は5位に終わりました。

 

昨今の本のタイトルのつけ方をみると、“大ヒット本のマネ”と思しき類似タイトルが散見されます。ビジネス書でいえば、「・・・の方法」、「・・・しなさい」など。さすがに小説ではオリジナリティを発揮したタイトルが多いのですが、ノウハウ本やビジネス本になると似通ったタイトルがたくさん見られます。気を引くための刺激的な言葉、断定的な言葉、奇抜な言葉、下品な言葉、上から目線の言葉、飛躍した言い方、このようなタイトルも多いですね。

 

世界のベストセラーといえば圧倒的に「聖書」ですが、国内での単行本ベストセラーは、Wikipediaによると以下の通りとなっています。

 

  1. 家庭における実際的看護の秘訣(研数広文館ほか)1,000万部
  2. ノルウェイの森(上・下)(講談社)1,000万部
  3. 窓ぎわのトットちゃん(講談社)800万部
  4. 星の王子さま(岩波書店)600万部
  5. ハリー・ポッターと賢者の石(静山社)506万部
  6. 五体不満足(講談社)477万部
  7. 道をひらく(PHP研究所)450万部
  8. 家庭の医学(時事通信社)435万部
  9. ハリー・ポッターと秘密の部屋(静山社)433万部
  10. 人を動かす(創元社)430万部

 

1番は1925年発売の本ですから別としても、その他は皆さんも購入したかあるいは読んだことがある本もあるのではないでしょうか。いずれもその時代を風靡した記憶に残る作品が並んでいます。

 

ほかにもジャンルによっては累計で大部数売れているロングセラーもあります。辞典、参考書、漫画、歴史的名作などにみられます。

 

リアル書店で本が売れなくなってきています。このままでは“町の本屋さん”が無くなってしまうのではないかと危惧しています。いっぽうで、頑張っている小さな“個性派”書店も全国各地で増えています。真の“本好き”が支えているのでしょう。

 

一般に、10万部売れたらベストセラーといわれます。今では単行本で10万部売れる本はずいぶんまれであるといわれます。出版社にとっては初版で刷る部数もだんだん少なくなってきました。

最近では100部以下の小ロットの本をオンデマンド印刷で制作することも増えています。でも、市場に流通させようとすると最小限のロットは必要なわけですから、たとえ自費出版であっても本屋さんに並ぶことを前提とすれば最低500部が必要になってきます。

小社のような地方出版社では、2,000部売れたら大ヒット、10,000部売れると社の記録を塗り替える大ベストセラーみたいな話になってきます。