中性紙とはどんな紙?
中性紙とは
中性紙とは、中性から弱アルカリ性のpH域で製造された紙をいいます。抄紙時に充填剤として主に炭酸カルシウムが使用されています。
酸性紙による劣化の問題
20世紀半ば頃から、酸性紙による劣化が問題視されるようになりました。それまでは大量生産された紙はほぼ全てが酸性紙でした。しかし、19世紀や20世紀初頭に作られた紙が100年もたたずに劣化がみられるようになると社会問題として取り上げられるようになりました。
紙の寿命は、洋紙の場合は100年、和紙の場合は1000年といわれています。和紙は、歴史的に見て1000年を超えていても保存状態のいい文書が多数現存しています。
紙の保存性
紙の保存性は、製造方法や保存環境によって大きな差が出てきます。紙が劣化する主な原因は、日光・湿気・温度変化・製本時の接着剤・カビ・害虫などで、ある程度の時間がたつとどうしてもボロボロになってしまいます。
原料繊維の種類も紙の寿命に影響します。わが国最古の印刷物「百万塔陀羅尼経」(AD 770年)の原料は麻類が使われています。繊維が長く、セルロース分が多く、リグニンが少ないので保存性が高くなります。洋紙の場合は、機械パルプを原料としていて繊維中にリグニンが多いので、空気・日光・熱・温度・湿気などの影響で化学反応を起こしやすく保存性が悪くなります。
紙のpHも寿命に影響します。紙に含まれる酸により、紙を構成するセルロースが痛められて、長い間には劣化していきます。時間経過とともに茶褐色に変色し、ぼろぼろになってしまいます。
酸性紙と中性紙を見分ける
用紙が酸性紙か中性紙かを確認したい場合は、中性紙チェックペンというものが販売されているそうです。ペンで紙をなぞると、pHを色で判別することが出来るようです。
他には、紙片を燃やして、燃え残った灰が白ければ中性紙、黒っぽければ従来紙(酸性紙)という判別方法もあるようです。
中性紙は製紙技術の大きな進歩
洋紙の場合、中性紙の寿命は酸性紙の3~4倍といわれます。それなのになぜ以前は酸性紙ばかりだったのかというと、技術的に難しかったこととコストの問題です。中性紙も酸性紙も原料は同じ木材繊維を使っています。抄紙の際にインキのにじみを防止するためにサイズ剤というものが使われます。このサイズ剤を使う処理過程で紙が酸性になります。その後の技術の進歩により、中性サイズ材を使用して大量生産できるようになり、コスト的にもそれほど変わらないまでに改良がなされました。この技術は洋紙の製造史上大きな出来事だったといわれています。
現在では、中性紙は書籍や資料に用いられているほか、上質紙の多くは中性紙が使われています。
古紙の問題点
中性紙への移行は進みつつあるものの、酸性紙も混在しています。この移行過程で古紙の問題があります。集荷された古紙のなかに酸性紙と中性紙が混じっていると、再生処理段階で技術面に難しい問題もあります。今後はそれらの問題を解決しながら移行が進んでいくことになるでしょう。