自費出版の基礎知識(「著作権」、「出版権」、「中間生成物の所有権」について)

自費出版の基礎知識(番外編1)

はじめに

今回は、ちょっとお堅いお話です。

本の出版にかかわる際に必要となる「著作権」と「出版権」についての基礎知識をお話しします。そして、本など印刷物の完成品を作るまでの印刷用データや版などを「中間生成物」といいますが、その所有権についても触れておきます。

 

「著作権」と「著作者人格権」について

著作者とは、その著作物を創作した者であり著作権者です。

著作者はその著作物について、著作者人格権」と「著作権(財産権)」の二つの権利をもっています。

「著作者人格権」について

著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することのできない権利です。

 

1. 著作者人格権の内容

著作者人格権は、「公表権」、「氏名表示権」および「同一性保持権」の三つを内容としています。

  • 公表権
  • 氏名表示権
  • 同一性保持権

 

「著作権」について

著作権は財産的権利なので他人に譲渡したり遺族が相続したりすることができます。

著作者は、その著作物を複製する権利をもっています。

 

1. 著作物を自由に利用できる場合

たとえば次のような場合には著作物を自由に利用できます。いくつかの例を挙げます。

  • 私的利用のための複製
  • 図書館等における複製
  • 引用
  • 教科用図書等への掲載
  • 展示による複製等(ほか)

 

<参考>

著作権法では、一定の「例外的」な場合に著作権等を制限して、著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています(第30条〜第47条の8)。

ただし、著作権が制限される場合でも,著作者人格権は制限されないことに注意を要します(第50条)。なお、これらの規定に基づき複製されたものを目的外に使うことは禁止されています(第49条)。また、利用に当たっては、原則として出所の明示をする必要があることに注意を要します(第48条)。

文化庁のホームページには、「著作物が自由に使える場合」として上記の5項目、その他の場合についても詳しく挙げていますので参考にしてください。

 

2. 著作権の保護期間

実名の著作物は、著作者の死後50年保護されることになっています。

 

 

「出版権」について

1. 出版権とは

出版権とは、出版を引き受ける者が著作物を著作権者の明確な同意を得て、文書または図画として頒布の目的をもって複製する権利です。

 

2. 出版権の設定

著作権者は、その著作物を文書または図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができます。

著作権者が出版を許諾し、その出版の条件として出版権者又は出版社が印税を支払う場合には、出版権の設定が行われます。

 

3. 出版権の設定を行わない場合

出版社が発行または販売という形であっても、出版の一切の費用を著作権者が負担して、出版社には経営的な負担をかけないという契約の場合は、実質的には著作権者の「自費出版」であるので出版権の設定は行わない場合があります。

ただし、最近では著作権者が出版の費用の一部を負担して、一定の条件の下で印税を支払うという契約も行われています。これは自費出版と商業出版の中間の形であるので、「協力出版」などと呼ばれています。

 

4. 出版権の存続期間

出版権の存続期間は自由に契約できますが、契約がない場合には3年となっています。ただし契約の自動更新はありえます。

 

5. 出版権の消滅後の販売

契約が終了したのち、著作権料を支払っている場合にはその在庫について引き続き販売しても差し支えないことになります。

 

 

「中間生成物の所有権」について

1. デジタルデータ(中間生成物)は誰のもの?

印刷物製造の作業途中での製版フィルムや印刷版のことを印刷物の中間生成物と呼んでいます。印刷技術のデジタル化に伴って印刷用データ等も中間生成物であるといえます。

従来の判例では、これらの中間生成物は、それを作成した印刷会社が所有権が帰属することを認めています(平成13年7月9日東京地裁判決)。

同様に、お客様が作成したデジタルデータの所有権はお客様に、それを印刷用に加工した印刷用データは印刷会社に所有権があると考えられます。