3歳まではスマホに触らせないで

3歳まではスマホに触らせないで

歯の治療で定期的に通院している歯科医院にこんなポスターが貼ってありました。「3歳まではスマホにさわらせないで!~親子のふれあいを大切に、“こころ”と“ことば”を育てよう~」。日本小児科医会が啓発を行っている内容だそうで、ポスターは「松江市子どもとメディアに関する協議会」が発行しています。

大阪府教育庁が公立小中学校で児童生徒のスマホの持ち込みを認める素案を示したという記事が報道されました。保護者からの要望が強く、災害時に子どもへの連絡手段として必要だということが理由として載っています。

地方紙の山陰中央新報、2019年3月19日「明窓」に、「脳は活字派」というコラムが載っていました。脳のうち思考や判断を司る前頭前野の活動が、活字を読むことでより活発になる。小児科医の説明として、乳幼児におもちゃの代わりにスマホを与える危険性を説き、その代わりお薦めなのが絵本の読み聞かせ。活字を声に変えて、親子が物語を共同体験することで幼子の思いやりの脳を生むと結んでいます。もっともスマホでも活字を読むわけで、正確には「紙派かデジタル派か」ということでしょうけれど。

国は小中学生の教科書を紙から電子媒体に変える、もしくは併用することを始めました。タブレット端末を使った授業などの実証実験も全国の教育機関で行われています。

毎年3月ごろには次年度の紙の教科書が出そろいます。子どもの頃に使った教科書の感触などとっくに忘れていましたが、先日久しぶりに現物を手に取ってみると、実に紙の本として注意深く丁寧に作ってあることがわかります。五感に訴えるというか、手で触ったときの感触、目に優しく文字や挿図が見やすい用紙の選択、教科書体という特別な文字フォント、カラーユニバーサルデザインへの配慮、丁寧な誌面デザインと構成。確かに重さという欠点はあるものの、内容が簡単に変更できるデジタル画面とは段違いに配慮を尽くして作ってあることがわかります。私などは、デジタル画面では文字を読むことはできるけれども、内容が少々込み入っていて読んでよく理解しようとする場合には、やはり紙でないと頭に入ってこないと思うのですがいかがでしょうか。

東北大学の川島隆太教授は「スマホが学力を破壊する」(集英社新書)という本のなかで、―スマホを使えば使うほど学力が破壊されてしまう―。仙台市の中学生の生活・学習状況を5年間に亘って調査した結果、スマホの依存症が発達期の子どもの脳に与える悪影響について警告、教育の危機であると指摘しています。

2018年の全国生協連の調査では、一日のうちで読書時間がゼロと回答した大学生が53.1%という結果が発表されています。仕事中であろうと授業中であろうと暇があればスマホを見るという、一種の中毒症状が大きな原因になっている、ということもいわれます。

私は紙の将来を悲観してはいませんが、あまりにも過度なデジタル狂時代にはなってほしくないなと思います。(H.T)

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