デジタル教科書は1年間しか使えない~デジタル化の問題点
国が購入して提供するデジタル教科書が1年間しか使えないことが議論されている。
中教審デジタル教科書推進ワーキンググループでは、2025年7月、デジタル教科書の使用可能期間などについて議論し、このほどその資料(参考サイト参照)が発表された。国で購入して提供しているデジタル教科書はライセンス期間が1年となっており、このことについて様々な問題点が指摘されている。
たとえば、過去にさかのぼって学習し直したい時にそれができないこと、デジタル教科書に書き込んだ内容が当該年度しか参照できないこと、何らかの事情で学習を中断しなければならなくなった場合に中断前の学習内容を振り返ることができないこと、などの問題点が指摘されている。操作性の改善や、インクルーシブ教育の観点でも工夫が求められている。
デジタル教科書は、紙の教科書に比べて利点がある一方で、書き込みがしにくい点や、目で文字だけを追って読んでも頭に入りにくいなどのデメリットも指摘されている。よけいに学年をまたいで振り返りの学習が必要になってくるがそれができない。
高校生の場合などは、相当期間のブランクがあっても大学に挑戦することができるような制度があるが、その場合には過去の教科書を参照することができない。
デジタル教科書にはダウンロードや印刷機能も備わってはいない。
配信コストの問題や、必要なライセンス期間、オフラインでの保存の問題など、検討がされるべきであると冒頭のワーキンググループの資料では指摘している。
多くの議論の中でせっかく導入した教科書のデジタル化である。
紙の教科書であれば、授業で使わなくなっても手元に残しておけば半永久的に参照することができる。このままでは子供たちの学力が年々低下していくことが懸念される。事実そういう指摘もある。
子どもたちの学びを支え、効果的な学習成果の向上が一番の目的であるとすれば、速やかに制度を見直すことが必要ではないか。
(参考サイト)文部科学省:制度面の検討事項②について
https://www.mext.go.jp/content/20250708-mxt_kyokasyo01-000043617_2.pdf